【海外の性教育】性差別を禁じる“Title IX”って何?スタンフォード大学院に通うrisakoさんにインタビュー!

READYBOX特別企画【海外の性教育】をスタートします。このシリーズでは、海外で暮らす方々へのインタビューを通じて、日本だけではなく、国際的な視点から性教育について考えていきます。第1回目のインタビューとして、スタンフォード大学教育大学院修士課程在籍risakoさんにインタビューを実施しました。

Risakoさんのご紹介

女性が野心と自信を持って一歩踏み出すことを後押しする、一般社団法人Lean In Tokyo運営メンバー。一般社団法人SKY Laboにて女子中高生へのSTEAM教育の推進や、株式会社Selanにて教育カリキュラムの開発に携わる。スタンフォード大学教育大学院修士課程在籍。世界経済フォーラムGlobal Shaper選出。

“Title IX”とは

今回はrisakoさんがスタンフォード大学院で受講された“Title IX”(タイトルナイン)というトレーニングを中心に海外の性教育についてお話をお聞きします。

“Title IX”とは1972年にアメリカで制定された、連邦が財政支援をする教育プログラムや活動におけるあらゆる性差別を禁じる法律のことです。性差別だけではなく、性暴力、セクシャル・ハラスメント、ストーキング、親密な関係間の暴力、その他のすべての性的な行為が含まれており、留学生を含む全学生に適応されます。学校にはTitle IXコーディネーターを設置する義務などもあるようです。

Risakoさんインタビュー

三上:Risakoさんはいつのタイミングでこの“Title IX”を受講したのでしょうか。

Risako:大学によって仕組みは違うと思うのですが、私たち留学生は、授業が始まる前にオンラインで受講しました。思っていたよりしっかりした内容で、受講し終わるまで2時間くらい時間がかかりました。

三上:実際に受けたオンライントレーニングの内容はいかがでしたか。

Risako:まず最初は「Title IXとは何か」という概要だったり、大学のポリシーだったり、基本的なことが説明されました。その後、実際の動画やケーススタディ(ボーダーライン、性的同意、セクハラなど多岐にわたる)でクイズに答えて学ぶスタイルでした。

このクイズが結構難しかったんです。クイズの内容は、例えば「友達と遊んでいる時に、彼女の携帯に何度もパートナーから『早く帰ってこい』とメッセージがきている時、どう対応する?」といった具体的なものです。この場合は選択肢が「①介入しすぎるパートナーだね、私が何か言ってあげようか? ②大丈夫?何か手伝えることある? ③そんな彼別れた方がいいよ」など、どれも日常で使いそうな発言なのですが、この場合の正解は②で、「自分の価値観を押し付けずに対応する」というベースが守られているか、などが判断基準になるとのことでした。

三上:かなり具体的ですし自分の思考も反映されますね。考えてみると日本ではこういった教育機会はほとんどなく、実際の場面に遭遇するとその人の経験や価値観に頼るしかないですもんね。

Risako:そうですね。特にいいなと思ったのが、セクハラなどのNGだとわかりやすいものだけでなく、付き合っているパートナーとハグする動画などで同意がされていたかどうかをジャッジするものもあることです。こういったことも学んでおかないと、相手の権利を無視していること自体に無自覚だったりするためです。

三上:他にトレーニングを受けて感じたこと、新しく知ったことがあれば教えてください。

Risako:印象的だったのが、Title IXの相談オフィスの紹介が動画内でも、オリエンテーション・学内メールなど他の場面でも出てくるところです。本当にあらゆる場面でどこに相談できるか、そして難しい場合は誰を頼っていいのかが説明されるので、いざという時でもすぐに行動できると思いました。私は日本の大学にも通っていましたが、正直被害を受けた時にどこに相談するか覚えていませんし、そこに相談したところで本当に助けてくれるかどうかも不安でした。

他にも、人種はもちろんですが、「パートナー」として動画に出てくる人も必ずしも男女でなかったりするので、どんなアイデンティティを持った人も安心して学べる内容だったと思います。

三上:確かにそうですね。私も自分の大学でセクハラをどこに相談すべきか一度だけオリエンテーションで聞いた覚えがありますが、その一回切りです。今のお話を聞いてそもそも「性」にまつわるあらゆることがかなりオープンに、そして権利として主張されていると感じたのですがいかがでしょうか。

Risak:そうですね。例えば、The Stanford Daily(学内新聞のようなもの)でも、いわゆる学生新聞のようなスポーツなどの記事と同じように人種差別発言のことも掲載されているし、セクハラなどについてオープンな場で議論することにも慣れているし、話さないと逆に見過ごされて不利を益被るイメージがあります。もちろんすべて実践できているかどうかは人によると思いますが、少なくとも集団の意識として性に関する権利や、他人に対してやっていいこと・悪いことのボーダーのルールが認識されていると感じます。

三上:なるほど。オープンな場で話せるからこそ「これはダメだよね」という共通認識がブレにくい、というのはありそうですね。

一連のお話をお聞きする中で、Title IXの学習内容は日本でもあるといいなと感じました。特に、ケーススタディで学べることで、綺麗事ではなくより実践的であることも魅力的だと思いました。性教育は何回も実施すべき、とよく言われますが、義務教育以外でも年齢に合わせて学べるポイントが増えるよう、今後READYBOXでも対象年齢の幅を広げていきたいと思います。本日はありがとうございました。

【参考文献】

Know Your IX, “Title IX” 

アメリカ大学Title IXオフィス体験記~泣き寝入り0を目指すシステム~

特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ